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むかし、こわかったたくさんの事は、随分とこわくなくなってしまった。 何に安心し、何に対して諦めたんだろう。 いくつかは想像に及ぶのだけど。 そしてむかしは何とも思わなかったようなこと、気にならなかったようなことを多少こわがるようにもなった。 価値観が変わった、と、いうことなのだろう。 簡単に言えば。

たくさんの事を通り過ぎてきて、たくさんの事を手に取ったり戻したり、戻しても手にくっついていたり、そういうことの積み重ねで手のひらが育っているのか汚れているのかわからなくなるような、そういう状態で今の手のひらがある。 これから年を重ねることで熟練する部分もあるし、関節が曲がりにくくて不便になるようなこともあると思う。 その変化を見続けることが生きていっているということなんだろうなと、他人事のように思う。 勿論、日々、笑ったり泣いたり、悔しがったりしてふつうに「感じ」て生きている。 ある程度それが、自分のもっている枠を超えてしまったら、急に俯瞰する姿勢で、現実味がすぅっとみるみる、退色していく。 あの、抜けていく感じは、どうにも好きにはなれない。 好きにはなれないのに、癖になってしまう。 いたみからこころを逃せるし、気持ちの温度をすばやく下げることができる。 気色は悪いのに、気持ちいい、みたいな錯覚がある。

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