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毎年のこと。

  • 執筆者の写真: 莉江 藤田
    莉江 藤田
  • 2016年8月30日
  • 読了時間: 2分

毎年、この日ばかりは想うことがある。 殆どを、もう忘れてしまったようなのだけれど、それでも覚えていることも勿論あって。 こころのなかでそっと手を合わせながら、かなしい気持ちと、それを振り払いつつのおめでとうを言う。 あったことのないひとに複雑な気持ちで手を合わせ、言えないおめでとうをべつのひとへ。 ちいさくだけ、口のなかで呟く。 わたしはなんだか自分の誕生日が辛くて、毎年誕生日はずっと仕事だといいのにと思う。 8月の末日も、休みじゃなく、仕事だと、少し助かる。 記憶が曖昧な気もするのだけれど、確か、そう聞いたはずのかなしい話がある。 わたしがうまれてきたことを、よかったと言ったひとは、そのことばを話すじぶんが、何度、じぶんがうまれてきたことについて考えたのかと思うと、わたしはただ勝手に、自分の誕生日に辛くなる。 そんなことを望んでいないのは百も承知で、そんなことは知りもしないのも百も承知で、今やわたしの誕生日も覚えてやしないかもしれないのに、それでもやっぱり、知って言えなかったことを今更に思う。 あの日、伝え抱きしめる必要があったことに気づかなかった自分の愚かさを。 今のわたしがあるのは、あなたがこの日うまれたから。 その感謝とはべつに、ただただ、あなたがうまれたことをよかったと、そう伝えたかった。

 
 
 

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